▼ことばの意味は転じていく
サラブレッドということばも「育ちが良い」「血統が良い」という意味で用いられることがある。語源から言えば「徹底的に(thorough)+改良された(bred)」であり、良血とか純血といったニュアンスはもともとなく、ことばが使われている間に意味が転じたものと推察する。意味の変化を間違いだというつもりはないし、むしろそれが自然な流れなのだと思っている。しかし、本物のサラブレッドが「純血」と程遠いことは理解しておきたい。
父系は3頭の馬に辿り着く。ダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンで、三大始祖だ。この3頭に辿り着くのがサラブレッドであるというのは、少し違う。初期にはもっと多くの始祖となる馬がおり、淘汰の結果、サイアーラインでは3頭に絞られたのだ。3頭の話は有名だから、競馬ファンでなくても知っている人は少なくない。しかし、牝馬の話はそんな簡単ではない。
▼牝馬は別
牝系に至ってはもっと多くの始祖となる馬がいる。
サラ系の馬も8代以上サラブレッドと掛け合わせて、能力を認めてもらえればサラブレッドに昇格することもできる。血統の閉じた世界と思われがちだが、ファミリーラインは新しく増える可能性もあるということだ。サラブレッドとは血統書上の定義といえる。
牝系は3大始祖に辿り着くわけではないのだ。
▼究極の雑種
生物学的にも、サラブレッドはひとつの品種でないことは知られている。肋骨や腰骨の数が、馬によって違うのは有名である。サラブレッドとは、アラブ種、ターク(トルコ)種、バルブ種などの混血であり、例えば「アラブ種」から選抜された一群をサラブレッドと呼ぶというようなものではないのだ。
散漫な話になってしまったが、要はサラブレッドが「究極の雑種」であると言いたかったのだ。ことばの原義のとおり、徹底的に改良された馬たちなのである。血統を中心に予想する人はもちろん、競馬ファンとしては頭の中にいれておきたい。サラブレッドの成り立ちを考慮した血統論であるかないかは、予想の良し悪しはともかく、根源的な問題なのだ。
(SiriusA+B)
(SiriusA+B)