2016年8月29日月曜日

第111夜 すべてのコースは直線と曲線でできている(下)


▼「形容詞」の処理
大きい、小さい、強い、弱いなど、形容詞で表されたものを分類のために数値化することも、経験を得れば難しいことではない。
わたしは、だいたい以下のいずれかの「数値化」ツールを使い分けている。
(1)
平均値を出し、偏差値を出すか、平均以上・平均未満の分類をする
(2)1
位から最下位までの順位付けをする

例として各競馬場ダートコースの1周距離、高低差などを書き出して、平均との比較をしてみよう。

 
一周距離
最少幅員
直線距離
高低差
m
百分比
m
百分比
m
百分比
m
百分比
札幌ダ
1,487
97
20
90
264.3
78
0.9
36
函館ダ
1,475.80
96
20
90
260.3
77
3.5
140
新潟ダ
1,472.50
96
20
90
353.9
105
0.6
24
福島ダ
1,444.60
94
20
90
295.7
88
2.1
84
東京ダ
1,899
124
25
113
501.6
149
2.5
100
中山ダ
1,493
97
20
90
308
91
4.5
180
京都ダ
1,607.60
105
25
113
329.1
98
3
120
阪神ダ
1,517.60
99
22
100
352.7
105
1.6
64
中京ダ
1,530
100
25
113
410.7
122
3.4
136
小倉ダ
1,445.40
94
24
109
291.3
87
2.9
116
合計
15,373
 
221
 
3,368
 
25
 
平均
1537.25
 
22.1
 
336.8
 
2.5
 

資料としてダートコースを持ち出したのは、わたしの周囲に、芝コースのイメージと混同している人がいたのも理由の一つである。
芝コースとダートコースの形状は結構違う。
例えば、東京競馬場が広く大きいことはご承知のとおりで芝コースのイメージとあまり差はないのだが、高低差は意外にも平均的である。
おそらく走破タイムは10場の中で最も速くなるだろうという予測できる。
函館競馬場では高低差は中山競馬場に次いで大きく、1周距離は新潟競馬場とほぼ同じである。
中山競馬場は案外狭く、直線も短く、高低差は最もきついため、スピードはそれほど出ないだろうという予測もつく。

▼相対的な傾向
このように形容詞で表された競馬場ごとの複雑な形状を整理することによって、そして比較しやすい形にすることによって、わたしたちの思考も明快になってくる。
タイトルのとおり、「すべてのコースは直線と曲線でできている」ということばの意味をご理解いただけたであろうか。
わたしも「複雑で簡単ではない」と片付けることは少なくないが、簡単化する努力を怠っているだけであれば、ぜひ実践してみてほしい。
単純にすることによって見えてくるものは、精緻な数字ではなく、相対的な傾向である。
厳密な分析ばかりがすべてではない。
傾向さえ掴むことができれば、多くの問題を解決できる。
(SiriusA+B)

2016年8月25日木曜日

第110夜 すべてのコースは直線と曲線でできている(上)


▼モノを整理する力
今夜は競馬場のコースの形状について考察する。

複雑な物事を整理して単純化できる能力は、競馬だけでなく、社会生活の中でも役立つが、日頃の訓練によって身に付けることができる。
わたしの場合、仕事上、表計算ソフトで簡単な計算システムを構築することがよくあり、自然と「場合分け」などを身に付けた。
上手くいくのは、システム発注者自身が気づいていなかった法則や場合分けを発見したときである。

▼コースの特徴を「システム化」するとしたら
ちょっとした、システムと言うには簡単な表計算ソフトの関数やVBAマクロ程度の仕組みなら次のように発注者に取材しながら作る。
中央競馬の競馬場について予想ツールの仕組みを作るという例を挙げてみる。

中央競馬には10ある競馬場のコースは、JRAが紹介する通りそれぞれ特徴がある。
わたしなら「すべて直線と曲線(カーブ)の組み合わせでできている」と言う。
そんな話をすると、反論されることもある。
「直線と言っても長かったり坂道があったりするし、カーブも急なところや緩いものもある。粘り気がある洋芝を使っているコースもあって、とにかくそんな単純じゃないんだよ」
という具合である。
反論には重要な要素が含まれている。
それをひとつずつ拾う。
「そうすると、直線には長短がある。曲線には緩急がある。それに加えて、高低差がある、と。高低差にも大小があるってことだね。芝コースには洋芝使用の有無がある、と」
特徴や例外は、ある・なし、の「場合分け」にしてしまう。

「芝は、新潟・中山・京都・阪神で内回りと外回りコースがある。競馬場によるが、外回りコースは内回りに比べて、直線が長い、曲線が緩い、高低差が大きい、という特徴がある」
このように、情報が付加されることもあるだろう。
「では、芝コースは、中央競馬で10あるのではなくて14ある。内回りと外回りを比較しないで、14個のコースとして捉えよう」
わたしならこう答える。

取材を続けると、同距離でもコーナーの数がコースによって異なることや左回り右回りも整理されてくるだろう。

(
分類例)

1周距離
長い/短い
周回方法
左回り/右回り
直線
長い/短い
高低差
大きい/小さい
曲線
きつい/緩い
洋芝
有り/なし

わたしは、コースの大きさそのものも重要な情報だと考えているが、この「発見」は案外難しい。
幸運に恵まれない限り、そうした発見までの長さは考える時間の長さに比例すると思っている。
(
次の夜につづく)
(SiriusA+B)

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