▼スピード指数系でよく知られたふたつのこと
負担重量が重くなるほど速度が上がる現象の話である。
スピード指数系の予想では、斤量(負担重量、ハンデキャップ)を1kg=0秒2に換算するのが一般的であるようだ。
西田式スピード指数の解説でもそのように記されていたと記憶している。
換算値はマイル(1600m)を想定しており、距離の短縮や延長にあわせて調整を行なう。
57kgで出走した馬は55kgの勝ち馬より0秒4速いはずで、同じ55kgなら勝っていた、などと使う。
この換算については、スピード指数を用いない人たちにもよく知られているように思う。
0秒2という換算値が妥当かどうかの議論はあるけれど、斤量が重いほど速度が低下するのは自明なことのように思える。
ところが、実際に調べてみるとその通りにならない。
重い斤量であってもスピードが速くなっているのである。
この事実もよく知られている。
(2006-2014年平地競走完走馬430,278頭の平均速度)
負担重量が重くなるほど速度が上がる現象の話である。
スピード指数系の予想では、斤量(負担重量、ハンデキャップ)を1kg=0秒2に換算するのが一般的であるようだ。
西田式スピード指数の解説でもそのように記されていたと記憶している。
換算値はマイル(1600m)を想定しており、距離の短縮や延長にあわせて調整を行なう。
57kgで出走した馬は55kgの勝ち馬より0秒4速いはずで、同じ55kgなら勝っていた、などと使う。
この換算については、スピード指数を用いない人たちにもよく知られているように思う。
0秒2という換算値が妥当かどうかの議論はあるけれど、斤量が重いほど速度が低下するのは自明なことのように思える。
ところが、実際に調べてみるとその通りにならない。
重い斤量であってもスピードが速くなっているのである。
この事実もよく知られている。
(2006-2014年平地競走完走馬430,278頭の平均速度)
斤量
(kg) |
芝件数
(頭) |
芝速度合計
(km/h) |
芝平均速度
(km/h) |
ダート件数
(頭) |
ダ速度合計
(km/h) |
ダート平均速度
(km/h) |
48.0
|
47
|
2799.61
|
59.57
|
15
|
876.54
|
58.44
|
49.0
|
349
|
21085
|
60.42
|
360
|
20863.8
|
57.95
|
50.0
|
807
|
48693.6
|
60.34
|
678
|
39197.8
|
57.81
|
51.0
|
6901
|
411391
|
59.61
|
6727
|
383209
|
56.97
|
52.0
|
8948
|
538382
|
60.17
|
8197
|
472104
|
57.59
|
53.0
|
10694
|
639934
|
59.84
|
11408
|
653000
|
57.24
|
54.0
|
67919
|
4047103
|
59.59
|
52851
|
3018099
|
57.11
|
55.0
|
42728
|
2563216
|
59.99
|
36978
|
2131290
|
57.64
|
55.5
|
48
|
2931.68
|
61.08
|
1
|
56.65
|
56.65
|
56.0
|
39887
|
2364419
|
59.28
|
51817
|
2954770
|
57.02
|
56.5
|
38
|
2285.66
|
60.15
|
20
|
1185.11
|
59.26
|
57.0
|
35777
|
2147940
|
60.04
|
44588
|
2585140
|
57.98
|
57.5
|
356
|
21501.6
|
60.40
|
177
|
10394.4
|
58.73
|
58.0
|
1357
|
81704
|
60.21
|
387
|
22670.6
|
58.58
|
58.5
|
33
|
1985.12
|
60.16
|
27
|
1582.29
|
58.60
|
59.0
|
88
|
5346.01
|
60.75
|
62
|
3679.4
|
59.35
|
59.5
|
2
|
120.76
|
60.38
|
|
|
|
60.0
|
4
|
239.64
|
59.91
|
1
|
59.02
|
59.02
|
62.0
|
1
|
58.28
|
58.28
|
|
|
|
▼現実との乖離を埋める仮説
恥ずかしい限りだが、わたしにはこの現実、つまり「斤量増と速度上昇」が正の関係にあることを、非常に長い期間、飲み込めずにいた。
集計期間の取り方やデータの集計方法の未熟さ、あるいは単なる誤差と思うことにしてーー要するに「スルー」してきた。
しかし、予想理論を組む上で、斤量という要素の取捨選択が必要だった。
そろそろ見過ごす訳にはいかないと考えるようになってきたのだ。
ところが、十分なデータ量をもって集計しても、同じ結果になってしまう。
性別、年齢、クラス別、同一馬での比較など、いろいろな条件も付加してみたが、一向に改善しない(斤量が重いほど速度が低下するデータにならない)のである。
そこで、斤量が増えても速度が上がっている事実に矛盾のない説明を考えることにし、しばらくこの問題を片付けることに集中した。
閃くまでずいぶん時間を要したが、試行錯誤の上、ようやく、ひとつの仮説を立てることができた。
それは、「斤量では、能力差を完全に埋めることはできず、能力差を縮小する程度でしかないこともある」というものである。
斤量はすべてではない。
正直に言って、長い間、こんな当たり前のことも思いつかなかった自分を情けなく思った。
▼斤量は騎手と馬の負担が考慮されている
仮説は「勝率からみて、牝馬のセックスアローワンスは小さいのではないか」という疑問とつながり、ハンデキャッパーの「斤量だけでレースを左右することはできない」というコメントとつながって、発想するに至った。
考えてみれば、平地競走の斤量はほぼ48kgから58kgの範囲内に収められている。
これには明確な理由がある。
重すぎると馬への負担が大きくなり過ぎ、軽すぎると騎手への負担が大きくなり過ぎるのだ。
G1級の馬に65kgくらい背負わせ、未勝利馬には45kgくらいの斤量としたら、もしかしたらいい勝負になるかもしれないが、現実にはできないということである。
したがって、能力差の完全な調整はできず、縮小に留まる(と考える)のは、上下限が事実上あるからなのだ。
では、ハンデ戦における、例えば斤量57kgは何を表しているかというと、「格」かもしれない。
負担重量ではなく、出走馬の中での実力上位者を表す記号と見做すのである。
ハンデキャッパーが出走馬全体を眺めて斤量を相対的に調整することも、格付に近い。
この調整では、タイム換算のことなど二の次であろう。
(SiriusA+B)