2016年9月6日火曜日

第113夜 血統理論と全兄弟


▼一卵性の双子と全兄弟はぜんぜん違う
「全兄弟」に対する考え方の話題である。

血統理論で「理由付け」の難しいものに「全兄弟」がある。
遺伝子レベルの理論になっていないため、同じ父と母であるから区別する要素が少ないのである。
もちろん、異なることをわかった上で、競走成績の違いに注目し、理論付けする人もいる。
しかし、「ほぼ同じ」と解釈する向きも少なくないようだ。

結論から言うと、父と母が同じでも、両親から受け継ぐひとつひとつの遺伝子は2分の1の確率で異なる。
一卵性の双子の話と混乱している人がいるけれど、双子は100%同じ遺伝子であるのに対し、兄弟姉妹の場合100%同じ遺伝子である確率はほぼゼロに等しい。
人間の兄弟姉妹を見ればわかるとおりなのである。
似ているけど、結構違う。
サラブレッドも同じである。
似ているところもあるが、異なるところもかなりあるので、きちんと「別の馬」と捉えるべきだろう。

ただ、確率的に半分ほど同じ遺伝子を受け継いでいるので、兄弟揃って成功することもある。
例えば、全兄弟の種牡馬、ディープインパクトとブラックタイドである。
ディープインパクトの全弟ブラックタイドは、兄に比べて牝馬に恵まれない中で健闘している。
次第に健闘が認められ、牝馬の質も上がってきているようだ。
下表にはないが、2015年には産駒のG1制覇も果たした。
まるで、同じく全兄弟だったニジンスキーとミンスキーのような関係とでも言おうか。
競走成績も種牡馬成績も全兄ニジンスキーが上回っていたが、ミンスキーもそこそこ活躍していた。
ドラマとしては、不出走ではあったが、競走馬として成功した全兄フライングチルダーズを上回る種牡馬となったバートレッドチルダーズのようになると面白いのだけれど。
蛇足だが、サラブレッドの基礎を作ったとさえ言われる競走馬エクリプスは、バートレッドチルダーズの曾孫である。
現在のサラブレッドの95%程度の祖先ということである。

2006-2014平地競走完走馬の血統別比較

父馬
祖先馬
頭数
完走回数
勝利回数
勝率
獲得賞金
平均獲得賞金
ディープインパクト
Stirrup Cup[1890]
16
171
21
12%
329,597,000
20,599,813
ブラックタイド
5
18
0
0%
1,800,000
360,000
ディープインパクト
Habanera[1890]
2
7
1
14%
14,034,000
7,017,000
ブラックタイド
5
31
2
6%
30,790,000
6,158,000
ディープインパクト
Paradoxical[1891]
12
79
10
13%
211,070,000
17,589,167
ブラックタイド
1
1
0
0%
1,100,000
1,100,000
ディープインパクト
Reposo[1894]
3
33
6
18%
77,248,000
25,749,333
ブラックタイド
5
37
1
3%
15,546,000
3,109,200
ディープインパクト
Admiration[1892]
14
122
15
12%
246,796,000
17,628,286
ブラックタイド
4
44
2
5%
20,860,000
5,215,000
ディープインパクト
Navaretta[1893]
13
94
9
10%
120,956,000
9,304,308
ブラックタイド
6
33
1
3%
17,840,000
2,973,333
ディープインパクト
Yours[1894]
14
162
18
11%
282,891,000
20,206,500
ブラックタイド
3
22
2
9%
14,000,000
4,666,667
ディープインパクト
Chelandry[1894]
8
53
12
23%
194,780,000
24,347,500
ブラックタイド
2
6
1
17%
5,000,000
2,500,000

(SiriusA+B)

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