▼ひとまずのまとめ
1990年生まれの繁殖牝馬670頭を調査した一連のシリーズを、ひとまず終える。
データをあれこれいじりながら、「発見した」いろいろな事象を綴ってきた。
舌足らずな説明をしたところも少なくないが、その点はご容赦いただきたい。
改めてこれまでに記載した内容に目を通して、「要するに、まとめるとこういうことだな」とするなら、以下のようになるかと思う。
(1)同じ繁殖牝馬から産した兄弟姉妹でも、獲得賞金額にはかなり差があるということ
(2)一般的な傾向として、1-5番目に生まれた仔、また、繁殖牝馬が8、9歳くらいの仔の成績が相対的に優秀であること
(3)上記(1)(2)から、血統を論じるには、出生順位や出産時年齢などが必要ではないかということ
(4)繁殖牝馬の競走馬時代の成績は、「思っているほどは」産駒成績と連動しないこと
(5)獲得賞金が大きい産駒の弟妹は、優秀な成績を収める可能性が高いこと
▼残された課題
一方で、分析できなかった、あるいは調べてみたが突き止められなかった課題もある。
例えば、繁殖牝馬の競走馬時代の成績以外に産駒の優劣を予想する情報は見つかっていない。
第130夜に例として名牝「メジロラモーヌ」で挙げたように、孫や曾孫あたりでひょっこりと優秀な馬が現れる。
こうした「名馬の出現傾向」はまったく掴めていない。
また、同じ繁殖牝馬の産駒である兄弟姉妹の成績にも幅があり、血統だけで予想を立てることは困難だとも思うに至っている。
半兄弟、全兄弟でも「同じ」ようにはならない。
今回の調査によって、競馬予想の血統理論でまかり通っている「父母が同じ全兄弟=同じ成績になるはず」的な誤りは、やはり誤りだと感じることが多かった。
両親の遺伝子のいずれかを50%の確率で選択していくのである。
兄弟姉妹でまったく同じ選択になる確率のほうがほとんどないのだ。
全兄弟といえども同じではない、というほうが、よほど無理なく説明できる。
さらに違いとして、早期の産駒のほうが良績である傾向は確認できたものの(これは遺伝子のチョイスというより生殖細胞の話)、必ずしも出生順位順に優秀というわけではない。
このあたりのことがまだ理論化できていない。
いずれにせよ、相当な時間を費やしたものの、繁殖牝馬の分析はたいへん有用であった。
競馬予想に直接的に使える「発見」は出生順位あるいは繁殖牝馬の出産年齢くらいであったが、従来から疑問を呈してきた「父馬に偏った分析」や「全兄弟は同じ血統であるはず」といった血統理論の主張が、ますます誤りであると意を強くした。
今後も、新たなトピックが見つかれば紹介したいと思う。
(SiriusA+B)