2017年1月6日金曜日

第141夜 2着でいちばん悔しかったのは


1着と2着の差
速さを競っていないこともあって、レースの走破タイムの差は非常に小さい。
しかし、着差以上に1着と2着の差は大きい。
賞金面から言えば、1着の賞金は2着の2.5倍である。
2
勝するのと同じ金額を稼ぐには2着を5回達成しなければならない(もちろん賞金額はレースごとに異なるので単純化すればという話である)
記録の面でも、騎手や調教師の成績は、賞金ではなく1着の数で競われる。
G1
競走優勝騎手というものはあっても、2着では記憶の風化は激しい。
馬券参加者のわたしたちなら、複勝系の馬券(複勝、拡大馬連(ワイド)、馬番連勝複式、3連勝複式)であれば、1着でも2着でも構わないので「ま、いいか」となるのだが、関係者は、そういうわけにいかないのである。
着差が僅差であるからこそ、その悔しい思いもひとしおだろう。
その悔しさは、誰のものか。
馬だろうか、あるいは、人間だろうか。
以前、このブログで記事にしたが(115夜「サラブレッドは勝利に酔うか」)、馬はゴール板を知らないと思うと申し上げた。
馬が悔しい思いをしたのなら、そしてそれを次の競走まで覚えていたのなら、2着になった次の競走の成績に表れるのではないかと思い、ちょっと座興に調べてみた。
2006-2014
年の中央競馬平地競走で前走が2着だった馬の着順は下表のとおりだった。
「平均比」というのは勝率が平均と比べて何ポイント高い(低い)かを表している。

前走着順
出走頭数
勝利頭数
勝率
平均比
1
28,918
2,894
10.0%
3.0
2
29,054
6,016
20.7%
13.7
3
28,933
4,151
14.3%
7.3
4
28,737
3,019
10.5%
3.5
5
28,569
2,284
8.0%
1.0
6
27,810
1,832
6.6%
-0.5
7
27,436
1,435
5.2%
-1.8
8
27,030
1,187
4.4%
-2.6
9
25,809
961
3.7%
-3.3
10
24,575
757
3.1%
-4.0
11
22,875
640
2.8%
-4.2
12
21,074
527
2.5%
-4.5
13
18,712
402
2.1%
-4.9
14
16,067
354
2.2%
-4.8
15
13,423
241
1.8%
-5.2
16
9,467
182
1.9%
-5.1
17
2,488
32
1.3%
-5.8
18
1,739
31
1.8%
-5.3
全体
382,716
26,945
7.0%
0.0

やはり、前走が2着の馬が次走で勝利する確率は最も高かった。
ただ、これは「悔しい」と馬が思ったというより、クラスの中で1着馬が抜けて相対的に強くなったことによる。
さすがに、何日間も臥薪嘗胆の故事みたいな「悔しさをバネに」ということはないだろう。
逆に「次は負けない」と馬が思ってくれていれば、もう少し勝率は高くなると思うのである。

▼悔しいのは人間
そう考えると「悔しい」というのは人間ではないだろうか。
ちょっと集計方法が大雑把で乱暴なのだが、騎手・調教師・馬主の「前走2着で次の競走」の成績も調べてみた。
下表群である。
なお、調教師・馬主は同日開催の複数の競馬場の成績を含むので完全に正確なデータではないことを予めお断り申し上げる。
(
騎手)

前走着順
出走件数
勝利件数
勝率
平均比
1
25,017
2,402
9.6%
2.4
2
24,840
2,278
9.2%
1.9
3
24,625
2,161
8.8%
1.5
4
24,463
1,968
8.0%
0.8
5
24,300
1,845
7.6%
0.4
6
23,944
1,790
7.5%
0.2
7
23,712
1,696
7.2%
-0.1
8
23,269
1,556
6.7%
-0.6
9
22,839
1,530
6.7%
-0.5
10
21,855
1,359
6.2%
-1.0
11
20,719
1,284
6.2%
-1.0
12
19,164
1,180
6.2%
-1.1
13
17,247
1,031
6.0%
-1.3
14
15,119
904
6.0%
-1.3
15
13,035
753
5.8%
-1.5
16
9,593
502
5.2%
-2.0
17
2,396
119
5.0%
-2.3
18
1,815
102
5.6%
-1.6
337,952
24,460
7.2%
0.0

(調教師)

前走着順
出走件数
勝利件数
勝率
平均比
1
18,874
1,533
8.1%
1.3
2
18,693
1,438
7.7%
0.9
3
18,433
1,333
7.2%
0.5
4
18,341
1,324
7.2%
0.4
5
18,127
1,227
6.8%
0.0
6
17,976
1,213
6.7%
0.0
7
17,739
1,211
6.8%
0.0
8
17,569
1,178
6.7%
-0.1
9
17,181
1,132
6.6%
-0.2
10
16,292
1,075
6.6%
-0.2
11
15,585
974
6.2%
-0.5
12
14,459
894
6.2%
-0.6
13
12,993
755
5.8%
-1.0
14
11,364
715
6.3%
-0.5
15
9,656
563
5.8%
-1.0
16
7,142
427
6.0%
-0.8
17
1,489
98
6.6%
-0.2
18
1,143
69
6.0%
-0.7
253,056
17,159
6.8%
0.0

(馬主)

前走着順
出走件数
勝利件数
勝率
平均比
1
13,642
1,065
7.8%
0.4
2
13,131
968
7.4%
0.0
3
13,157
954
7.3%
-0.2
4
12,449
919
7.4%
0.0
5
12,557
937
7.5%
0.1
6
12,215
958
7.8%
0.4
7
11,973
891
7.4%
0.0
8
11,601
852
7.3%
-0.1
9
11,223
848
7.6%
0.2
10
10,761
767
7.1%
-0.3
11
10,183
756
7.4%
0.0
12
9,298
662
7.1%
-0.3
13
8,375
596
7.1%
-0.3
14
7,200
540
7.5%
0.1
15
6,203
425
6.9%
-0.6
16
4,314
308
7.1%
-0.3
17
987
81
8.2%
0.8
18
745
57
7.7%
0.2
170,014
12,584
7.4%
全体としてみれば、あまりこだわりはないようである。
馬主に至っては、まったく関係がないとさえ思える結果だった。
勝率差の広がり具合が、馬主<調教師<騎手となっているのは、レースに直接かかわっている度合いの影響だろう。
やはり、成績の良い騎手・調教師は、次のレースでも良いパフォーマンスであるということがわかる結果であった。
表のとおり、前走で2着であっても、大局的には次のレースに影響がない。
はっきり言えば、勝ちを逃してしまった後でも、淡々と次のレースをこなしているのだ。
考えてみれば、すぐに次のレースがあるので凹んでいる暇はないはずである。

では、最も悔しいのは誰なのか。
これは案外、馬券購入者かもしれない。
なかなか面白い投票行動もありそうだが、今夜はここまでとする。
(SiriusA+B)

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