2023年9月3日日曜日

第431夜 初勝利が何戦目だったか


▼手間のかかるデータほどオッズに反映されにくい
予想に使えるものは何でも使いたい。
馬券購入者の需要と情報技術の発達で、データの種類は増えた。
情報が増え過ぎて、もはや脳味噌で処理しきれない量である。
馬体に関する情報(馬体重くらいしかない)、レース前半の情報(スタートから3ハロンのデータを公表している専門紙はあるものの、主催者発表では先頭のラップタイムと通過順位くらいしかない)は、もっと欲しいとわたしは思う一方で、予想に大きな影響を与えるから公表してくれないだろうな、とも思っている。
あふれるほどの情報がありながら、いや、あるからか、ちょっと調べるのに手間がかかるものは見過ごされがちだ。
この手の宝探しが、わたしは好きだ。
このブログで言及したことがあるものでは、馬の誕生日から日齢・月齢などがある。
特に、古馬戦では有益だ。
馬齢はどこにでも書いている、と思う人は少なくないと思うが、人間の年齢に換算すると、生まれてすぐは1年で5倍、青年期で4倍、老年期で3歳ともいわれるのが馬の生涯である。
馬齢3歳の1年は、人間なら4年前後に相当するのだ。
1
月生まれと4月生まれでは高校1年生と2年生くらいの差があると考えていい。
馬齢は「ちょっと大きすぎる目盛」なのである。
馬の誕生日から調べる必要があるので敬遠する人が多く、このため、オッズに反映されにくいのである。
要するに、公開情報でありながら、自ら集める、集計するなどの手間がかかるものほど、皆と差をつけやすい。
今夜は、例として、「初勝利が何戦目だったか」というデータを取り上げる。
そう、誰でも調べれば分かる。
結論もだいたい分かるだろう。
ただ、調べないと詳しいことは分からない。
残念ながら、今回掲載した資料単独では予想に大きな影響を与えることはないけれど、出走回数や日齢・月齢と考え併せると、なかなか興味深い結果が得られるとわたしは思っている。

▼栴檀は双葉より芳し
図表431-1は、古馬戦に出走した馬が、何戦目に中央初勝利を挙げた馬なのかで13種類に分けた勝率である。
馬別ではなく、延べ出走頭数だから、同じ馬が何度もカウントされている。
延べ205,000強出走、16,000弱勝利数をもとにしたものである。
今回は傾向を見てほしい目的で作成しているので、母数が少なく勝率が凸凹しているところもそのままにしてある。
また、降級制度廃止をまたいでいるのでその影響はある。
平均出走頭数から勝率7%が平均であるから、これを念頭にご覧いただければと思う。

(
図表431-1)古馬戦に出走した馬の中央初勝利別勝率(2011-2021年の中央競馬平地競走に出走した2009年以降産駒)
中央初勝利 古馬1勝クラス 古馬2勝クラス 古馬3勝クラス 古馬オーブ゜ン
1戦目 9.6% 10.1% 9.3% 9.0%
2戦目 10.2% 10.0% 9.0% 7.4%
3戦目 9.4% 9.0% 8.1% 6.9%
4戦目 8.4% 8.0% 6.9% 5.9%
5戦目 8.1% 7.0% 6.6% 4.4%
6戦目 7.5% 6.1% 5.0% 3.2%
7戦目 6.8% 6.0% 5.9% 5.8%
8戦目 5.9% 4.7% 5.1% 4.1%
9戦目 5.4% 4.5% 5.9% 4.4%
10戦目 5.5% 4.3% 4.4% 4.3%
11戦目 5.3% 2.8% 6.3% 2.8%
12戦目 4.3% 3.0% 2.7% 1.5%
13戦目以降 4.6% 2.5% 2.4% 3.8%

ご想像のとおり、早期に勝ち上がった馬ほど勝利に近いことが分かる。
1
戦目中央初勝利というのは、多くが新馬戦である。
古馬オープン戦にもなれば、せいぜい3戦目、4戦目くらいで勝ち上がった馬でないと厳しそうだ。
「その割には12戦目で勝ち上がった馬たちの勝率が低いな」と思われるかもしれない。
勝率が低いのは、出走メンバーに12戦目で勝ち上がった馬たちがゴロゴロいるからである。
順当な結果かもしれないが、一方で、苦労して這い上がってきた馬たちの奮闘に目を向けてもいい。
1
2戦目で勝ち上がった馬に交じって出走するのだから、フロックばかりで同じ土俵に上がってきたわけではないのだ。
勝率は低いが、低すぎるわけではない。
穴馬はこういうところに潜んでいる。

▼中央初出走がG2
オーソドックスな経歴でない馬は、少し詳しく見ると思わぬ幸運をつかむことがある。
今夜の表にはないが、中央未勝利のまま出走し続け、古馬2勝クラス(1000万下)62戦目に10番人気で勝った馬もいる。
2009
年産駒で、キングクリチャンという馬である。
中央では62戦目に初勝利したが、中央初出走時には門別で1勝してからの参戦であった。
門別でデビューし、8戦目に1勝した。
中央に転厩し、初戦は2011年の京王杯2歳ステークス、G2である。
敗けたが、その後もしばらくペースについていけなかったようだ。
中央で5戦ほどすると、末脚の良さが出てきた。
それでも、2歳オープンや1勝クラス(500万下)で勝てないまま、地方に転厩、2勝して再び中央に転厩する。
中央62戦目は2018年の由比ヶ浜特別で2勝クラス(1000万下)である。
2016
年に同レースで3着になって馬券で穴を開けていた。
10
番人気で勝利したとき、馬齢は9歳であった。
みたび地方に転出して、競走生活は2020年まで続き、通算1104勝という成績を残した。
中央は1勝のみだが、中央最後の競走は16頭立て16番人気で14着に敗れたものの、勝ち馬との着差は05、上がり3ハロンはトップであった。

(SiriusA+B)

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