▼特別効果
競馬のダービーは特別なもので、日本では東京優駿(日本ダービー)を指すことが多いように思う。
もちろん、地方競馬にも幾つかダービーはあって、2023年まではダービーシリーズがあった。
レースとしてのダービーの名はよく知れ渡っており、サッカーJリーグで「静岡ダービー」「千葉ダービー」などのようにダービーを冠するものをよく見かけるだろう。
それこそ、日本ダービーだって本場英国ダービーに範をとったものだ。
ダービーの名の由来については、耳タコと思われるので省略する。
ご存知ない方がいらっしゃれば、ちょっと検索すれば答えが出てくるのでお調べいただきたい。
冒頭に「特別なもの」と書いたように、ダービーは他のG1競走とは異なる扱いがある。
最も著名なレース名だからだ。
あまり競馬に関心がない人でも知っている。
だから、勝てば、「ダービー」を冠するのだ。
ダービーを勝った馬は、「ダービー馬」と呼ばれる。
騎手はダービージョッキーと呼ばれる。
皐月賞馬、菊花賞馬、有馬記念馬とは言うかもしれないが、有馬記念ジョッキーとはあまり言わない。
そして、ダービー馬のほぼすべてが種牡馬になる。
史上最弱とまで言われたオペックホース号も種牡馬になった。
馬主の栄誉は、計り知れない。
本場英国ではチャーチル首相の名言も残っていよう。
生産者もそれは同様だ。
ときどき作品名を出す作家宮本輝先生の「優駿」では、そうした生産者の気持ちや意気込みを疑似体験できる。
では、調教師、トレーナーは?
トレーナーもまた、ダービートレーナーという栄誉に浴する。
栄誉ばかりではない。
騎手と同様に、良い馬も集まってくるだろう。
ダービーを制することは、特別なことなのだ。
近年、ダービーを勝った厩舎の翌年の成績を見れば、概ね上昇基調にあることが分かる。
2024年のダービートレーナーは安田翔伍師。
当時41歳、史上最年少という。
2025年は途中だが、成績は好調のように思われる。
騎手は、ひとりの好不調があるけれど、厩舎は集団である。
厩舎スタッフの仕事も、ダービーを制するほどに上手く回っていると思われる。
極端な上下動はなくても、好調は長く持続する気がする。
ダービー予想も楽しいけれど、わたしはダービー後の騎手や厩舎の変化に注目している。
ダービー優勝を境に、関係者の成績が変わることもあり、予想に活かすのだ。
「ダービーを勝った事実」ポイントを付けてみると面白いかもしれない。
ちなみに、わたしの馬券のスタンスは「G1でも未勝利戦でも、すべてのレースがダービーであり有馬記念である」である。
▼テレビ東京杯青葉賞
そんな特別感のあるダービーだが、優先出走権のあるレースでも特徴的だ。
複数あるステップレースで、ダービーの結果に差がありすぎるのである。
その中で、優先出走権を与えられるテレビ東京杯青葉賞(G2)に触れておきたい。
歴史については、まあ、専門家にお任せしたいが、概要だけ記すと、「青葉賞競走」を起源として良いのなら1958年にはあった。
青葉なんて清々しい名前だし。
1970年はなかったかもしれないが、それ以降、条件を変えながらも毎年施行されている。
1984年から東京芝2400m、青葉賞になり、1994年から重賞化、現行のレース名になった。
2025年の競走が第32回と銘打っているので、今「青葉賞」というと、1994年以降を指すと考えていいだろう。
G3からG2、優先出走権が3着までから2着までに、など若干の変遷はある。
変遷はあるのだが、とにかく青葉賞優勝馬からダービー馬が出ていないのだ。
舞台は同じである。
さて、何故なのか。
理由として考えられるものは幾つかある。
・出走馬のレベル、ダービーとは格が違う
・競走間隔、短い
・呪い
このうち、呪いは専門外なので分からないけれど、レベルや間隔なら思い当たる節がある。
わたしは割と納得しているのだが「ダービーと青葉賞との間隔が短く、栗東から東征しにくい」というものがある。
確かに、2024年までの31年間のダービー馬は5頭を除き関西馬である。
関東馬の青葉賞優勝回数は15回もある。
美浦組はどうにかなるとして、栗東組としては、ダービーと2回も東征するのはコンディションを整えるのに苦労するだろう。
また、出走権を得ている、得るのが確実な有力馬なら、青葉賞でひと叩きする必要性はない。
ダービーと同じ舞台で慣れさせるより、2,400mを短期間に2度走る疲労を懸念するかもしれない。
栗東有力馬は、そう考えると出走しにくい。
「出走すれば、このメンバーならG2競走を勝てるかもしれない」と思ったとしても、天秤にかけられるもうひとつのレースはダービーなのだ。
よし、青葉賞を制するぞ、とはならないだろう。
そもそも、青葉賞は優先出走権を賭けた競走だ。
プリンシパルステークスはともかく、G1皐月賞も優先出走権が与えられる。
この時点で、出走権獲得を目指す「遅れてきたヒーロー候補」なのだ。
ダービー出走を賭け、青葉賞でメイチに仕上げる必要がある。
ダービーまでの期間も短く、疲労をとりながらの中間の調整はたいへんだろう。
ところが、2025年はちょっと違う。
というのも、中間が1週長くなったのだ。
厳しい道程に加え、優先出走権の頭数でもお分かりのように、皐月賞組とレベルが違うと認識されているが、もしも、「実力はある、遅れてきたヒーロー」であれば、2025年は好機かもしれない。
疲労は回復するだろう。
同じコースを走った経験もプラスになるか。
馬券のチャンスは、このようなちょっとした変更にある。
いわゆる「番組理論」というヤツである。
ついでに言えば、1、2着とも関東馬である、関東馬16頭目の優勝馬だった。
さて、どうなるか。
結果は1週間もすれば分かる。
(SiriusA+B)
▼数字で予想する
馬のことは分からん、いっそ、数字の出方に賭けてみようとする人が出てきてもおかしくない。
ネットを回っていると、741の法則とか541の法則とか、549の法則、369の法則など、数字を使った法則が溢れている。
外形的に、どうでもいい話だが、これらは「理論」ではなく「法則」と呼ばれるものが多い気がする。
条件が揃ったときに何が起きるか予測するものが法則、何故そうなるのかを説明するのが理論だそうだ。
このような定義が正しいのなら、数字による予想法は「法則」で合っているような気がする。
法則の中身は様々で、ただの数字遊び(失礼)の類もあれば、大雑把だが経験則をよく踏まえてになるほど、と思わず唸ってしまうものまである。
そうしたものの成績は、ほどほどに的中し、たまに大きなものを当てて回収率も(平均に比べて)それほど悪くない、そのように思われる。
長期の収支はともかく、目の前のレースを当てられるかどうかであれば、一生懸命に考え抜いた予想と比べても遜色ないだろう。
下手に「あたしゃ、馬のことが分かる」と宣う人よりは潔い。
「ほどほどに的中し、回収率もそれほど悪くない」予想法には、魅力が詰まっている。
よくできた法則を調べてみると、前走4-7着近傍の成績の馬を抽出する仕組みになっているのだろう。
これは的中率と回収率から妙味のある部分を狙っている。
こうしたところは学ぶべき点である。
▼予想者集団を考える
貴方がもし、素人予想屋として名を上げようとするなら、門外不出で驚異的な予想か、ライトな馬券ファンが好む予想法の教導者となるか、いずれかが近道のように思う。
数字の法則予想法は、まさに後者だ(ちなみに、前者は名を上げることをせず、自分で馬券を買うほうがいい)。
馬券投票者の大部分はライトな馬券ファンである。
・馬のことは分からない、予想スタイルも確立しているわけでもない、と冷静に自己分析している。
・誰かの予想に乗るだけでは儲けられないし、自分なりに予想した感じがしない。
・小難しい理論は要らないが、かといってカルト的な話は信じていない。
・基本的に忙しく、競馬の研究をする時間を確保できない。
・毎週毎週、朝から晩まで競馬漬けというわけにはいかないので、長期戦略より短期決戦、できれば1日単位で良い収支を出したい。
・有料予想に出費したくない。
・馬柱以上の過去データを持っていない。
以上のような人が多いのだろうと思う。
数字の法則予想法は、まさに打ってつけなのだ。
直近の馬柱以上のデータは不要、手軽で無料。
経験に基づく法則だから、何故なのか理解するものでもない。
買い目に若干のオリジナリティ(独自性)を加えれば、自分で予想した実感も湧く。
1日やっていれば、何レースか当てられるし、上手くいけば黒字を出す日もある。
幸先良くスタートできれば、しばらく採用する人も少なくないと思われる。
ただ、月単位以上継続すると馬券収支で苦戦する日が目立つようになり、別の予想スタイルへと離れていくかもしれないが、シンプル故に試してみようとする人は後を絶たないだろう。
▼予想スタイルを考える
わたしも、似たような馬券術を即興で作ってみた。
「711の法則」とでも名付けよう。
次のふたつの数字をミックスすることにした。
前走人気+前々走着順
そう、人気と着順を足すのである、しかもふたつは同じレースのものでもない。
1番人気は1点、1着は1点とすれば、2点から36点だ。
これで、合計の値が7から11点になる馬を狙う。
前走は人気を使い、着順は使わない。
前々走は着順を使う。
このため、前2走完走した馬のみを対象とする。
前走は結果(着順)を考慮せず、前走人気と前々走着順という別のレースの異なるデータを足すのだ、ほどほどの奇天烈(キテレツ)感は出ていると思う。
一方で、適度な的中率と回収率を実現していると自負する。
組み合わせは意外なものと感じられるかもしれないが、キチンと理由がある。
このふたつのファクターは、前々走のパフォーマンスを反映している。
つまり、前走成績を見ないで前々走成績を重視する仕組みである。
ポイントは、7点から11点に焦点を当てることだ。
的中率は下がるが、最も高い単勝回収率の位置で絞る。
これが、予想法や競馬研究のトレーニングになる。
というのは、各ファクターの癖や特徴を掴めるからだ。
上記算式のほか、前走着順+前々走人気とか、前走着順+前々走着順などでもほぼ同様の結果を得ることはできる。
的中率をもう少し上げたいなら、足し算の合計「7から11」を小さく変更すれば良い。
小さくするというのは、人気馬にシフトすることだ。
その分、回収率はちょっと下がる。
1、2番人気・着順をもう少し分析すれば、精度はさらに上がるだろう(法則としてはシンプルにしたいのでここには目をつぶっている)。
わたしには、これらの算式で得られる勝率や回収率を、予め想像することができる。
長い間、このような組み合わせを繰り返し行なってきたので、主なファクターの特徴やファクター間の重なり具合などを把握しているからである。
オッズの特徴なども自己評価だがある程度理解しているつもりだ。
ファクターを組み合わせる作業は、まるで化学実験、或いは創作料理の開発のようだ。
「この組み合わせだと、こうなるのかあ」などと独り言をぶつぶつと、夜中に言っている。
わたしは、冒頭に取り上げた数字の法則たちに限らないが、他人様(ひとさま)の予想理論や法則をこのように活用させてもらっている。
(SiriusA+B)
(図表517-1)前走・前々走の人気・着順組合せの実績(2011-2024年中央競馬平地競走、過去2走完走馬)
【A】前走人気+前々走着順
【B】前走着順+前々走人気
【C】前走着順+前々走着順
【D】前走人気+前々走人気
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点数 |
【A】勝利回数 |
出走回数 |
的中率 |
回収率 |
【B】勝利回数 |
出走回数 |
的中率 |
回収率 |
【C】勝利回数 |
出走回数 |
的中率 |
回収率 |
【D】勝利回数 |
出走回数 |
的中率 |
回収率 |
2 - 6点 |
14,684 |
92,713 |
0.158 |
0.73 |
12,853 |
74,799 |
0.172 |
0.74 |
12,502 |
75,681 |
0.165 |
0.74 |
15,114 |
92,802 |
0.163 |
0.75 |
7 - 11点 |
10,862 |
112,482 |
0.097 |
0.79 |
12,631 |
115,675 |
0.109 |
0.79 |
12,703 |
120,615 |
0.105 |
0.77 |
10,722 |
110,009 |
0.097 |
0.80 |
12 - 16点 |
6,482 |
107,538 |
0.060 |
0.78 |
7,573 |
126,395 |
0.060 |
0.79 |
7,366 |
126,468 |
0.058 |
0.76 |
6,529 |
108,280 |
0.060 |
0.78 |
17 - 21点 |
3,551 |
96,263 |
0.037 |
0.73 |
3,241 |
108,283 |
0.030 |
0.71 |
3,508 |
103,366 |
0.034 |
0.75 |
3,360 |
94,913 |
0.035 |
0.72 |
22 - 26点 |
1,501 |
72,863 |
0.021 |
0.68 |
985 |
66,601 |
0.015 |
0.63 |
1,086 |
64,338 |
0.017 |
0.64 |
1,374 |
70,924 |
0.019 |
0.67 |
27 - 36点 |
423 |
36,507 |
0.012 |
0.52 |
220 |
26,613 |
0.008 |
0.49 |
338 |
27,898 |
0.012 |
0.58 |
404 |
41,438 |
0.010 |
0.50 |