競馬のダービーは特別なもので、日本では東京優駿(日本ダービー)を指すことが多いように思う。
もちろん、地方競馬にも幾つかダービーはあって、2023年まではダービーシリーズがあった。
レースとしてのダービーの名はよく知れ渡っており、サッカーJリーグで「静岡ダービー」「千葉ダービー」などのようにダービーを冠するものをよく見かけるだろう。
それこそ、日本ダービーだって本場英国ダービーに範をとったものだ。
ダービーの名の由来については、耳タコと思われるので省略する。
ご存知ない方がいらっしゃれば、ちょっと検索すれば答えが出てくるのでお調べいただきたい。
冒頭に「特別なもの」と書いたように、ダービーは他のG1競走とは異なる扱いがある。
最も著名なレース名だからだ。
あまり競馬に関心がない人でも知っている。
だから、勝てば、「ダービー」を冠するのだ。
ダービーを勝った馬は、「ダービー馬」と呼ばれる。
騎手はダービージョッキーと呼ばれる。
皐月賞馬、菊花賞馬、有馬記念馬とは言うかもしれないが、有馬記念ジョッキーとはあまり言わない。
そして、ダービー馬のほぼすべてが種牡馬になる。
史上最弱とまで言われたオペックホース号も種牡馬になった。
馬主の栄誉は、計り知れない。
本場英国ではチャーチル首相の名言も残っていよう。
生産者もそれは同様だ。
ときどき作品名を出す作家宮本輝先生の「優駿」では、そうした生産者の気持ちや意気込みを疑似体験できる。
では、調教師、トレーナーは?
トレーナーもまた、ダービートレーナーという栄誉に浴する。
栄誉ばかりではない。
騎手と同様に、良い馬も集まってくるだろう。
ダービーを制することは、特別なことなのだ。
近年、ダービーを勝った厩舎の翌年の成績を見れば、概ね上昇基調にあることが分かる。
2024年のダービートレーナーは安田翔伍師。
当時41歳、史上最年少という。
2025年は途中だが、成績は好調のように思われる。
騎手は、ひとりの好不調があるけれど、厩舎は集団である。
厩舎スタッフの仕事も、ダービーを制するほどに上手く回っていると思われる。
極端な上下動はなくても、好調は長く持続する気がする。
ダービー予想も楽しいけれど、わたしはダービー後の騎手や厩舎の変化に注目している。
ダービー優勝を境に、関係者の成績が変わることもあり、予想に活かすのだ。
「ダービーを勝った事実」ポイントを付けてみると面白いかもしれない。
ちなみに、わたしの馬券のスタンスは「G1でも未勝利戦でも、すべてのレースがダービーであり有馬記念である」である。
▼テレビ東京杯青葉賞
そんな特別感のあるダービーだが、優先出走権のあるレースでも特徴的だ。
複数あるステップレースで、ダービーの結果に差がありすぎるのである。
その中で、優先出走権を与えられるテレビ東京杯青葉賞(G2)に触れておきたい。
歴史については、まあ、専門家にお任せしたいが、概要だけ記すと、「青葉賞競走」を起源として良いのなら1958年にはあった。
青葉なんて清々しい名前だし。
1970年はなかったかもしれないが、それ以降、条件を変えながらも毎年施行されている。
1984年から東京芝2400m、青葉賞になり、1994年から重賞化、現行のレース名になった。
2025年の競走が第32回と銘打っているので、今「青葉賞」というと、1994年以降を指すと考えていいだろう。
G3からG2、優先出走権が3着までから2着までに、など若干の変遷はある。
変遷はあるのだが、とにかく青葉賞優勝馬からダービー馬が出ていないのだ。
舞台は同じである。
さて、何故なのか。
理由として考えられるものは幾つかある。
・出走馬のレベル、ダービーとは格が違う
・競走間隔、短い
・呪い
このうち、呪いは専門外なので分からないけれど、レベルや間隔なら思い当たる節がある。
わたしは割と納得しているのだが「ダービーと青葉賞との間隔が短く、栗東から東征しにくい」というものがある。
確かに、2024年までの31年間のダービー馬は5頭を除き関西馬である。
関東馬の青葉賞優勝回数は15回もある。
美浦組はどうにかなるとして、栗東組としては、ダービーと2回も東征するのはコンディションを整えるのに苦労するだろう。
また、出走権を得ている、得るのが確実な有力馬なら、青葉賞でひと叩きする必要性はない。
ダービーと同じ舞台で慣れさせるより、2,400mを短期間に2度走る疲労を懸念するかもしれない。
栗東有力馬は、そう考えると出走しにくい。
「出走すれば、このメンバーならG2競走を勝てるかもしれない」と思ったとしても、天秤にかけられるもうひとつのレースはダービーなのだ。
よし、青葉賞を制するぞ、とはならないだろう。
そもそも、青葉賞は優先出走権を賭けた競走だ。
プリンシパルステークスはともかく、G1皐月賞も優先出走権が与えられる。
この時点で、出走権獲得を目指す「遅れてきたヒーロー候補」なのだ。
ダービー出走を賭け、青葉賞でメイチに仕上げる必要がある。
ダービーまでの期間も短く、疲労をとりながらの中間の調整はたいへんだろう。
ところが、2025年はちょっと違う。
というのも、中間が1週長くなったのだ。
厳しい道程に加え、優先出走権の頭数でもお分かりのように、皐月賞組とレベルが違うと認識されているが、もしも、「実力はある、遅れてきたヒーロー」であれば、2025年は好機かもしれない。
疲労は回復するだろう。
同じコースを走った経験もプラスになるか。
馬券のチャンスは、このようなちょっとした変更にある。
いわゆる「番組理論」というヤツである。
ついでに言えば、1、2着とも関東馬である、関東馬16頭目の優勝馬だった。
さて、どうなるか。
結果は1週間もすれば分かる。
(SiriusA+B)