2016年4月7日木曜日

第75夜 奇跡の血量18.75%の実力を検証する


▼検証が面倒
検証するのが面倒だから、正しいのか迷信なのか多くの人が知らないものがある。
数学の世界では、素数でそんな話があった。
31
331333133331が素数である。
333331
333333133333331も素数だが、333333331は素数ではない。
333333331
÷1719607843

となるのである。
蛇足ついでに、3333333331も素数ではない。
コンピュータのない時代、3をつなげて下1桁を1とする数が素数だと言い切りたいと思った人は多いと思う。
素数は、素数であることを確認するのがたいへんなのである。
だからこそ暗号に利用されるのだが、確認は不可能なのではなく面倒なのだ。
同じように、競馬でも検証が面倒な世界がある。
血統である。
以前からこのブログでは、従来の血統理論に疑問を呈してきたが、これは論理的でないことに加え、サンプル数が少ないといった検証不足もその理由に挙げてきた。
しかし、そういうわたし自身も検証などしたことがなかった。
そこで、 今夜は思い切って検証作業に取り組んでみよう、ということで、頑張ってみた。
血統理論では古典的だが有名な「奇跡の血量」が本当に優秀なのか、調べてみたのである。
しかし、やはりたいへんであった。
いざ取り掛かってみたものの、中央競馬に出走した2004年生まれの馬4000頭あまりを調べ上げて力尽きた。
全馬検証しなければ確定的なことはいえないが、それでも検証したことがないよりは多少役立つと思われるので、挫折したところまでのデータを掲載する。
「奇跡の血量」とは、3×4または4×3のインブリードである。
ある馬の父と母を1とし、父の父などを2というように世代番号を振る。
父と母はそれぞれ血量が50%ずつであり、例えば母の母は25%、その母は12.5%などとしていき、先祖に共通の馬がいればその合計を血量として示す。
3
代目と4代目に共通の祖先がいれば、血量は18.75%になり、名馬が多いとされることから「奇跡の血量」と呼ぶのである。

()ストレイトガールの5代血統表(Haloヘイローの血量が18.75%の馬)



1(50%)

2(25%)

3(12.5%)

4(6.25%)

5(3.125%)

フジキセキ

サンデーサイレンス

Halo

Hail to Reason

Turn-to

Nothirdchance

Cosmah

Cosmic Bomb

Almahmoud

Wishing Well

Understanding

Promised Land

Pretty Ways

Mountain Flower

Montparnasse

Edelweiss

ミルレーサー

Le Fabuleux

Wild Risk

Rialto

Wild Violet

Anguar

Verso

La Rochelle

Marston's Mill

In Reality

Intentionally

My Dear Girl

Millicent

Cornish Prince

Milan Mill

ネヴァーピリオド

タイキシャトル

Devil's Bag

Halo

Hail to Reason

Cosmah

Ballade

Herbager

Miss Swapsco

ウェルシュマフィン

Caerleon

Nijinsky

Foreseer

Muffitys

Thatch

Contrail

フューチャハッピー

デインヒル

Danzig

Northern Dancer

Pas de Nom

Razyana

His Majesty

Spring Adieu

タイセイカグラ

モーニングフローリック

Grey Dawn

Timely Affair

ミリーバード

ファバージ

ラバテラ

 

問題は、名馬が多いのか、特に優秀なのか、ということだ。
なお、今回の検証では、血量18.75%を対象にしたので、3×5×5などで18.75%になった場合も奇跡の血量馬に含んでいる。
また、種牡馬だけではなく、牝馬のインブリードでも区別なく含んだ。
調査対象は、2004年生まれで中央競馬に出走した4123頭。
調査は挫折したものの、2004年生まれのかなりの割合をカバーしている。
この4123頭を「奇跡の血量18.75%」を含む馬とそうでない馬に分け、勝利度数や獲得した賞金を調べた。
対象競走は2006年から2015年の平地競走である。
同着1着もカウントしている。

▼奇跡の血量馬は果たして
調査した4123頭のうち、「奇跡の血量馬」は587頭だった。率にして14%である。
これらが中央競馬平地競走に出走し、完走した回数は延べ42700走だった。
このうち、奇跡の血量馬が出走したのは延べ5842走、これも14%である。
勝利数は2932勝で、奇跡の血量馬はそのうち14%401勝である。
獲得賞金の合計でも、奇跡の血量馬は全体の15%だった。
ということで、奇跡の血量馬とそれ以外の馬でほとんど差異はみられなかったというのが結論である。



奇跡の血量馬

それ以外の馬

合計

頭数

587(14%)

3536(86%)

4123

完走回数

5842(14%)

36858(86%)

42700

勝利回数

401(14%)

2531(86%)

2932

獲得賞金

8625384000

(15%)

50311229000

(85%)

58936613000

▼傑出した馬が多いのか
前項ではいずれも平均にならした数字であり、傑出した馬は多いのだという主張もあるかもしれない。
下表は、各馬の勝利数と2015年までの獲得賞金を対数化したもの(例えば調査期間中の獲得賞金が
6290万円なら、対数は7.7998としている)を使って比較したものである。
これも、血量にかかわらず両者に著しい差異はみられなかった。
血統ロマン派には申し訳ないが、奇跡は起きていなかった。

血統ロマンを語ることは素晴らしい。
だが、馬券に直結すると思い出したら、冷静に自問してほしい。
「その理論、検証しましたか」と。



奇跡の血量馬

それ以外の馬

合計

0勝馬

416

2402

2818

1勝馬

76

492

568

2勝馬

34

245

279

3勝馬

22

184

206

4勝馬

18

123

141

5勝馬

12

57

69

6勝馬

7

20

27

7勝馬

0

9

9

8勝馬

1

1

2

9勝馬

1

1

2

10勝馬

0

2

2

獲得賞金対数6未満の馬の頭数

258(15%)

1457(85%)

1715

獲得賞金対数6の馬の頭数

119(15%)

652(85%)

771

獲得賞金対数7の馬の頭数

143(13%)

973(87%)

1116

獲得賞金対数8の馬の頭数

66(13%)

445(87%)

511

獲得賞金対数9の馬の頭数

1(10%)

9(90%)

10
(SiriusA+B)

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