2025年3月2日日曜日

第507夜 多くの馬に、一度はスポットライトが


▼勝ち上がり率
後段で触れることになるが、穴馬の前歴(犯罪ではなく出走履歴)を調べているうちに、馬に焦点を当てた説明をしなければピンとこないなということに気が付いた次第である。
これまでも、断片的に触れる機会はあったものの、2024年までの競走成績を加えて改めて整理しておきたい。
レース単位で出走馬を見ることは多いが、馬単位で数字を掴んでおくことも有用であるように思う。
これまでの記事との重複もあるし、手練れの皆さんには旧聞ばかりかもしれないが、ご存じないことがひとつでもあって参考になるのであれば幸いである。
集計は、わたしの、このブログ用データベースなので多少誤りがあればご容赦願いたい。
2011-2024
年中央競馬平地競走で、2009年から2021年産駒について取り扱う。
現役馬もいて2025年以降の成績も加わってくれば数字は変わってくるので、その点もお含みおきいただければと思う。

最初に、中央競馬で何頭が出走しているのかをまとめたものが図表507-1である。
馬産地の情報はときどき検索してもらいたいと思うが、長期的なトレンドは、2012年頃底を打ち、その後反転して増えている。
軽種馬(サラブレッド、サラ系、アラ系など)1992年には12,000頭を超えていたがその後減少していき、2012年には7,000頭を割り込んでいた。
2024
年は8,000頭に迫るところまで回復している。
外国産馬も含むが、これに連動するように、世代別に中央競馬平地競走に出走した馬は、2010年産駒が4,500頭を割り込んでいるが、その後緩やかに回復し、降級制度の変更によって馬の回転が速まって、現在は4,800頭余りになっている。
中央競馬に出られるのは、同世代8,000頭のうち4,800頭、率にして60%である。
余談だが、東京優駿と優駿牝馬がフルゲートとして、計36頭は1,000頭に5頭の割合で、大学受験なら東大か京大に合格するくらいだろうか。
馬の回転が速まっているとお話ししたが、1頭当たりの生涯平均出走回数は近年減少している。
降級制度と、じっくり調教する傾向が高まっていると推定される。
この15年間で10.5レースから9.5レースくらいになった。
牝馬の比率は少しずつ増えており、2009年産駒で45%だった割合は、2021年産駒で49%にまで増加した。
需要と供給から考えて、馬産の伸び以上に需要が増えている、とみることもできる。

出走馬のうち、1勝以上できた「勝ち上がり」率は、32%から33%である。
8,000頭生まれて、4,800頭が中央競馬平地競走に出走して、1,500から1,600頭が勝ち上がる」ということだ。

(
図表507-1)世代別出走頭数、平均出走回数、勝ち上がり率

産駒年 出走実頭数 平均出走回数 牝馬 牝馬比率 勝利実頭数 勝上率
全体 60,789 9.5 28,875 0.475 19,631 0.323
2009年産駒 4,688 10.5 2,126 0.453 1,497 0.319
2010年産駒 4,468 10.6 2,062 0.462 1,497 0.335
2011年産駒 4,521 10.8 2,130 0.471 1,498 0.331
2012年産駒 4,504 10.6 2,072 0.460 1,469 0.326
2013年産駒 4,596 10.3 2,172 0.473 1,491 0.324
2014年産駒 4,673 10.3 2,208 0.473 1,501 0.321
2015年産駒 4,663 9.6 2,249 0.482 1,517 0.325
2016年産駒 4,741 9.5 2,353 0.496 1,532 0.323
2017年産駒 4,763 9.6 2,180 0.458 1,549 0.325
2018年産駒 4,768 9.4 2,291 0.480 1,551 0.325
2019年産駒 4,711 9.0 2,290 0.486 1,543 0.328
2020年産駒 4,826 7.5 2,357 0.488 1,518 0.315
2021年産駒 4,867 5.7 2,385 0.490 1,468 0.302

▼多くの馬に、一度はスポットライトが
ここに、ひとつのデータを加えてみたい。
3
着以内率である(出走頭数により馬券に絡まないこともあるが、ここでは「複勝圏」と呼称する)
図表507-2に記載した。
勝ち上がり率は、3233%だと申し上げた。
生涯で1回でも複勝圏に入った馬は4748%に達する。

冒頭で申し上げたように、穴馬を探そうとしていたのだが、複勝圏まで拡張して調べていくと、実は半分弱の馬が一度は馬券に絡むという結果が出てきたのである。
これを裏付けるように、生涯で単勝オッズ10倍未満の「人気馬」になった経験を得た馬の比率は51%である(図表507-3)
0
勝馬には、1戦しかデータがないものや、やはり実力がなくて早々に退場していく馬が多く含まれているのでこれを除くと、1勝以上の馬に至っては、94%に達する。
1
勝してから人気が出る馬もいるので、右欄に初勝利以前の10倍未満経験比率を付け加えた。
これをみても8割を超える。
貴方が、特に条件戦以上において、目ぼしい穴馬を見つけて、その根拠のために出走馬のデビューから戦歴を調べていったとき、「昔はソコソコ人気があったのだ」とほくそ笑むかもしれないが、実は、多くの馬は人気になっていた経験があるかもしれない。
「別に珍しいことではない」と切って捨てようというのではない。
むしろ逆で、どの馬にもチャンスがある、戦歴に大きな差はなく、これと思った馬は狙え、と言いたいのである。

▼人気の出なかった馬
図表507-3の作成中、気になった馬がいた。
5
勝馬ともなるとすべての馬が単勝オッズ10倍未満を経験すると思っていたら、1頭だけ例外があった。
2022
年のスレイプニル・ステークス(オープン競走)を勝利したテリオスベル号である。
中央競馬では245勝し、現役生活後半は地方で走って2023年のブリーダーズゴールドカップ(G3)を勝つなど活躍した。
中央競馬では、予想者たちの支持が最も良かったときでさえ単勝オッズ10.4(5番人気)であった。
24
戦中、5番人気が4回、6番人気が7回、7番人気が3回、8番人気以下が10回であった。
理由は調べていないので分からないが、これだけ勝っているのにと思うと、たいへん興味深い。
ちなみに、各レースで100円ずつ単勝を買っていたら2,400円が16,150円になった計算である。
わたしは、こういう馬を「(単勝)黒字馬」という。
この話題は次の夜にでも。

(
図表507-2)勝ち上がり率と3着以内率

産駒年 出走実頭数 勝利実頭数 勝上率 複勝圏実頭数 複勝圏経験比率
全体 60,789 19,631 0.323 29,014 0.477
2009年産駒 4,688 1,497 0.319 2,194 0.468
2010年産駒 4,468 1,497 0.335 2,184 0.489
2011年産駒 4,521 1,498 0.331 2,178 0.482
2012年産駒 4,504 1,469 0.326 2,172 0.482
2013年産駒 4,596 1,491 0.324 2,195 0.478
2014年産駒 4,673 1,501 0.321 2,206 0.472
2015年産駒 4,663 1,517 0.325 2,241 0.481
2016年産駒 4,741 1,532 0.323 2,263 0.477
2017年産駒 4,763 1,549 0.325 2,309 0.485
2018年産駒 4,768 1,551 0.325 2,268 0.476
2019年産駒 4,711 1,543 0.328 2,273 0.482
2020年産駒 4,826 1,518 0.315 2,291 0.475
2021年産駒 4,867 1,468 0.302 2,240 0.460

(図表507-3)単勝オッズ10倍未満の経験頭数

生涯勝利回数 実頭数 10倍未満経験頭数 経験率 初勝利以前の10倍未満経験頭数 経験率
0勝馬 41,158 12,485 0.303 12,485 0.303
1勝馬 8,868 7,826 0.882 7,159 0.807
2勝馬 4,772 4,688 0.982 4,129 0.865
3勝馬 3,084 3,076 0.997 2,733 0.886
4勝馬 1,704 1,702 0.999 1,499 0.880
5勝馬 713 712 0.999 626 0.878
6勝以上馬 490 490 1.000 431 0.880
合計 60,789 30,979 0.510 29,062 0.478
(1勝以上馬計) 19,631 18,494 0.942 16,577 0.844
(SiriusA+B)

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