▼独立な試行の確率
数学に弱いわたしたちは、しばしば確率について誤りを犯す。どうも直感と違う回答であることが多いのだ。
例えば、23人集まれば、同じ誕生日の人(同じ誕生日の組)は50%程度(50.7%)の確率で存在する。
直感では「そんなことないだろう」と思う。ところが、実際に検証してみればそうなっている。
一方で、直感どおりの場合もあり、わたしたちは迷ってしまう。
ひとつ言えることは、確率の問題は直感では誤ることも多いので、頭の良さで正答を導き出せるものではなく、知識として身につけておいたほうがよさそうだ、ということである。
わたしたちが競馬の世界でよく耳にするのは「1番人気が続けてこなかった(勝てなかった)から、次のレースはくる」というものである。
1番人気の勝率は、長い間、約3分の1であることは、このブログでも何度か触れてきた。
この確率の知識がある人で、2レース続けて1番人気が敗れたとき、次のレースで1番人気が勝つ確率は100%近くになると錯覚している人は少なくないようだ。
結論を言えば、誤りである。
前のレースの結果は、次のレースの結果に影響しない。
冷静になれば、「そりゃそうだ」と思うだろう。
これを「独立な試行の確率」と言おうか。
したがって、1番人気が続けて敗れようが、勝ち続けようが、次のレースの1番人気の勝率33%にはまったく影響しない。
「実際にはそんなことない。理論どおりにいかないこともある。現にこの前は1番人気が勝った」と主張する人もいるだろう。
確率の難しさは、こうした思い込みを矯正できないことにある。
半面、矯正し難いゆえに、ギャンブルや詐欺が成立するのだ。
この主張をする人の場合、実際に検証はしていないと思うが、おそらく、3回に2回はこの戦術で外しているものと思う。
▼実際に調べてみた
それでは、ほんとうに前のレースの影響を受けていないか、調べてみよう。
なお、同着の分別は行なっていないので、若干の差異があることはご了解いただきたい。
2006年から2014年まで、全31,077競走が実施された。
このうち、1番人気が勝利したのは、9,948競走で、勝率は32.0%である。
最終競走を除くと(1日12競走の場合は11競走)、28,482競走、このうち1番人気の勝利は9,229競走、勝率32.4%。
この1番人気が勝利した9,229競走の次の競走(第2競走から最終競走)で、続けて1番人気が勝利したのは2,991競走であった。
この勝率は、31.5%である。
最終競走と次の第1競走をつなげると、もっときれいに数字が揃うが、とりあえずということで。
(1)全競走の1番人気
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31,077競走9,948勝(32.0%)
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(2)最終競走を除く全競走の1番人気
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28,482競走9,229勝(32.4%)
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(3)上記(2)の1番人気勝利競走の次の競走の1番人気
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9,229競走2,991勝(31.5%)
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実際に検証した結果、1番人気が勝利した次の競走でも、1番人気が勝つ確率はほとんど同じ、つまり前の競走との関係がまったくないことを確認できる。
したがって、もし、「次は絶対、1番人気がくると思ったよ」という人がいたら、確率が上がって予想が的中したのではなく、3回に1度のふつうの確率で的中したものと考えておけばいいだろう。
(SiriusA+B)