2015年11月3日火曜日

第36夜 夏に恋した牝馬はボクたちに本当の姿を見せたのか



「夏は牝馬」という話について述べるために調べていくと、いろいろと興味深いデータがあったので、今夜はこの話を中心に綴る。

データはすべて2006年から2013年の中央競馬平地競走である。

 

巷間で「夏は牝馬が強い」ということばがある。ほんとうにそうなのか、ということで調べてみた。

1をみていただくと、巷間の印象どおり、確かに夏場は牝馬の勝利数・牝馬占有率(牝馬が勝利した割合)が増加していた。

特に8月は全競走の42%で牝馬が勝利した。

7月から9月にかけてこの傾向が続いている。なるほど、牝馬が強いといわれるだけのデータである。

(1)平地競走の牡牝別勝利数



全競走数

牡馬
勝利数

牝馬
勝利数

牝馬
占有率

01

2,125

1,524

601

28%

02

1,940

1,402

538

28%

03

2,288

1,648

640

28%

04

2,237

1,576

661

30%

05

2,282

1,599

683

30%

06

2,074

1,386

688

33%

07

2,457

1,508

949

39%

08

2,358

1,375

983

42%

09

2,274

1,406

868

38%

10

2,191

1,512

679

31%

11

2,220

1,534

686

31%

12

2,130

1,530

600

28%


26,576

18,000

8,576

32%

 

では、果たしてほんとうに牝馬が強いのか、さまざまな角度で検証してみたい。

最初の疑問は、牝馬限定戦(仮に出走馬がすべて牝馬であった競走があれば牝馬限定戦として扱う)である。

夏に牝馬限定戦が数多く組まれているなら、牝馬が強いとはいえないかもしれないのだ。

結果として言えば、逆であった。

牝馬限定戦は冬場にやや多く組まれていて、夏は少ないのである。

JRAの競馬番組担当者は、冬場の牝馬勝利数を落とさないように配慮しているのではないかと推測する。

(2)牝馬限定戦数とそれを除いた牡牝別勝利数(平地競走)



全競走数

牝馬
限定戦

限定除く
競走数

牡馬
勝利数

牝馬
勝利数

牝馬
占有率

01

2,125

347

1,778

1,524

254

14%

02

1,940

291

1,649

1,402

247

15%

03

2,288

390

1,898

1,648

250

13%

04

2,237

363

1,874

1,576

298

16%

05

2,282

379

1,903

1,599

304

16%

06

2,074

298

1,776

1,386

390

22%

07

2,457

350

2,107

1,508

599

28%

08

2,358

346

2,012

1,375

637

32%

09

2,274

300

1,974

1,406

568

29%

10

2,191

301

1,890

1,512

378

20%

11

2,220

326

1,894

1,534

360

19%

12

2,130

292

1,838

1,530

308

17%


26,576

3,983

22,593

18,000

4,593

20%

 

もしかすると、「牝馬は冬に弱い」のか。

これは、次の表3-13-2を参考にしてもらいたい。

実は、年間を通して、牝馬は芝での成績に比べ、ダートでの成績は良くない。

冬に弱いのではなく、得意な競走が少ないのだ。

冬場に芝競走が少なくなること、数少ない芝競走を限定戦に割けないことなどが理由に挙げられよう。

このため、特に冬場には牝馬限定戦が多いのではないだろうか。

(3-1)牝馬限定戦数とそれを除いた牡牝別勝利数(芝競走)



芝競走数

牝馬
限定戦

限定除く
競走数

牡馬
勝利数

牝馬
勝利数

牝馬
占有率

01

835

86

749

605

144

19%

02

830

88

742

599

143

19%

03

948

130

818

676

142

17%

04

1,069

156

913

732

181

20%

05

1,232

201

1,031

821

210

20%

06

1,066

109

957

686

271

28%

07

1,362

154

1,208

772

436

36%

08

1,376

187

1,189

744

445

37%

09

1,233

146

1,087

718

369

34%

10

1,171

158

1,013

750

263

26%

11

1,180

183

997

751

246

25%

12

993

110

883

691

192

22%


13,295

1,708

11,587

8,545

3,042

26%

 

(3-2)牝馬限定戦数とそれを除いた牡牝別勝利数(ダート競走)



ダ競走数

牝馬
限定戦

限定除く
競走数

牡馬
勝利数

牝馬
勝利数

牝馬
占有率

01

1,290

261

1,029

919

110

11%

02

1,110

203

907

803

104

11%

03

1,340

260

1,080

972

108

10%

04

1,168

207

961

844

117

12%

05

1,050

178

872

778

94

11%

06

1,008

189

819

700

119

15%

07

1,095

196

899

736

163

18%

08

982

159

823

631

192

23%

09

1,041

154

887

688

199

22%

10

1,020

143

877

762

115

13%

11

1,040

143

897

783

114

13%

12

1,137

182

955

839

116

12%


13,281

2,275

11,006

9,455

1,551

14%

 

次の疑問は、出走頭数である。

牝馬の出走頭数が増えて、その結果勝利数が増え、「夏は牝馬」と言われているのではないかという疑問だ。

4-14-2を参照していただきたい。

確かに、芝競走では、夏場の牝馬出走数は増えているが、出走比率も高くなっているようだ。

出走比率と連動するように牝馬が勝つ割合も増加している。ダート競走は芝競走ほど顕著ではないにせよ、同様の動きを見せている。牝馬は元気なのだ。

牝馬はやはり、夏場に強いのだろうか。

最後の疑問は競走条件である。

これは皆さんご自身で調べてもらいたいのだが、夏場は下級条件戦が増加する。

牝馬は相対的に下級条件馬が多く、競走数が増えると出走機会が増える。

さらに、各クラスの有力牡馬が勝ち上がって一息入れた後、手薄なところに殺到して勝ち上がっているのではないかとも考えられる。

牝馬はこの書き入れ時に休んでいるわけにいかないのだ。

以上の考察からは、夏だから牝馬が強いのだ、とまでは断定できなかった。

ただし、暑い夏に(馬は本来暑さに弱い)出走してきて勝っているのだから、「夏は牝馬」というのは少なくとも外れているとはいえない気がする。

うーん、煮え切らなかった。

(4-1)牝馬限定戦を除いた牡牝別出走数と勝率(芝競走)



牡馬
出走数

牝馬
出走数

合計
出走数

牝馬出
走比率

牡馬
勝利数

牝馬
勝利数

合計
勝利数

牝馬
占有率

牝馬
勝率

01

4,932

1,987

6,919

29%

605

144

749

19%

7.2%

02

6,126

2,767

8,893

31%

599

143

742

19%

5.2%

03

6,189

2,560

8,749

29%

676

142

818

17%

5.5%

04

6,604

3,011

9,615

31%

732

181

913

20%

6.0%

05

7,733

3,666

11,399

32%

821

210

1,031

20%

5.7%

06

8,064

4,050

12,114

33%

686

271

957

28%

6.7%

07

8,940

5,270

14,210

37%

772

436

1,208

36%

8.3%

08

8,655

5,431

14,086

39%

744

445

1,189

37%

8.2%

09

5,890

3,619

9,509

38%

718

369

1,087

34%

10.2%

10

6,930

3,319

10,249

32%

750

263

1,013

26%

7.9%

11

8,337

3,789

12,126

31%

751

246

997

25%

6.5%

12

5,972

2,467

8,439

29%

691

192

883

22%

7.8%


84,372

41,936

126,308

33%

8,545

3,042

11,587

26%

7.3%

 

(4-2)牝馬限定戦を除いた牡牝別出走数と勝率(ダート競走)



牡馬
出走数

牝馬
出走数

合計
出走数

牝馬出

走比率

牡馬
勝利数

牝馬
勝利数

合計
勝利数

牝馬
占有率

牝馬
勝率

01

12,485

2,907

15,392

19%

919

110

1,029

11%

3.8%

02

10,844

2,727

13,571

20%

803

104

907

11%

3.8%

03

12,763

3,137

15,900

20%

972

108

1,080

10%

3.4%

04

11,170

2,857

14,027

20%

844

117

961

12%

4.1%

05

10,553

2,516

13,069

19%

778

94

872

11%

3.7%

06

9,322

2,372

11,694

20%

700

119

819

15%

5.0%

07

9,329

2,847

12,176

23%

736

163

899

18%

5.7%

08

8,308

2,919

11,227

26%

631

192

823

23%

6.6%

09

8,811

3,390

12,201

28%

688

199

887

22%

5.9%

10

9,678

2,652

12,330

22%

762

115

877

13%

4.3%

11

10,091

2,755

12,846

21%

783

114

897

13%

4.1%

12

11,261

2,922

14,183

21%

839

116

955

12%

4.0%


124,615

34,001

158,616

21%

9,455

1,551

11,006

14%

4.6%

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